西荻窪の居抜き物件を
刺繍教室&ショップにリフォーム
vol.12 杉並区西荻窪『Atelier アンナとラパン 刺繍道具店』
白い外壁に、ラベンダーブルーの両開き扉。ガラス戸にかかるカーテンには、丁寧に刺繍された赤いチョウチョウ。
ここは刺繍作家・刺繍イラストレーターとして多くの書籍を出版し、YouTubeやインスタグラムでも大人気の、annasこと川畑杏奈さんのアトリエ。
1階が刺繍関係のグッズを購入できるショップで、2階が教室です。
今年7月にオープンしたばかりですが、アンティークショップやすてきなカフェが建ち並ぶ西荻窪の街にすっかり溶けこんでいます。
杏奈さんによるデザインをもとに、タカキホームの職人がオリジナルで制作した両開きドア。この先にどんな空間が広がっているのだろう、とワクワクさせてくれます。
以前はアパートの1室で刺繍教室を開いていた杏奈さん。今年の2月、美容師の知人に「近くの物件が空くから移ったら?」と紹介されたのが現在の場所でした。
「窓が大きく自然光がたっぷり入る空間にピンときました。それまでの場所もよかったのですが、暗いことが気になっていたんです」。
タカキホームは、物件の大家さんからの紹介。以前、施工で関わったことがあり、ここなら安心と紹介されたそうです。
「他の工務店とも打合せをした中で、私の感覚と一番近かったのがタカキホームでした。常に一歩先を見て提案してくれましたし、ちょっとした質問にもすぐ返事をくれるので、安心できました」と話す杏奈さんに続けて、ご主人の論さんが「何気なく言ったことに対しても、きちんとフォローしてくれたよね」と続けます。
笑顔のすてきな諭さんと杏奈さん
「ここは1階が和風の居酒屋、2階が従業員の休憩室兼収納として使われていた居抜き物件でした。最初に見た時はかなり雑然としていて、大丈夫かなと少し不安でした」と諭さんは振り返ります。
けれど杏奈さんは、スケルトンの状態にしてもらえたら、あとは自分たちでかわいくできる、という確信があったそう。
「何もないところに、どんな素材をどう組み合わせるのか。刺繍も空間作りも、同じこと。自分の手を動かして作ることが楽しいし、大好きなんです」とにっこり。
タカキホームが手掛けたのは、床材や天井のクロス貼り、ドアとキッチンの造作、すき間のコーキングなどベースとなる部分で、それ以外はふたりが仕上げたそう。
現場監督をつとめたタカキホームの女性スタッフは、「引き渡しの時はシンプルな空間だったのに、こんなにすてきになっていて感動しました。特にパステルピンクやネイビー、ミントグリーンなどで大胆に塗られた壁は、杏奈さんならではのセンス。バランスが絶妙ですよね」と話します。
杏奈さんに塗装のコツを伺うと「まずは一部分だけ塗り、様子を見て少しずつ面積を増やしていくと失敗しません。立っている時と座っている時では見え方も異なるので、椅子に座った状態でも確認するとよいですよ。飽きたら塗り替えればいいのだから、もっと気軽にチャレンジしてみては」とアドバイスしてくれました。
Story
川畑杏奈さんの刺繍の世界
ひと目見ただけでストーリーが伝わってくる、杏奈さんの刺繍。甘くやさしい世界に引きこまれます。
店内には、季節に合わせた刺繍が飾られます。旅先で見たものがアイデアソースになることが多いそうです。
作品のディスプレイを考えるのが大好きで、ほぼ毎日どこかしら替えているそう。今回の店舗リノベーションに、その経験がおおいに役立っています。
紙に刺繍をする「紙刺繍はがきセット」。刺繍後は、はがきとして実際に送れます。
壁の色との調和も考えて、飾る作品を選ぶとのこと。どの刺繍もとても繊細で、見る人を癒やします。
1階のショップには、杏奈さんセレクトの刺繍材料やキットが並びます。
Story
「実は当初、2階はすべて自分たちでリノベーションをするつもりでした。だけど天井裏に荷物が見つかったり、痛んだ箇所があったりと予想以上に手間がかかりそうで。結局後から2階の天井掃除やクロス貼り、壁板貼りなどを追加でお願いしたのですが、こうした変更にも柔軟に対応してもらえました」と諭さん。
杏奈さんは「『気持ちの良い空間になった』と刺繍教室の生徒さんに喜んでもらえたのが、何よりもうれしいですね」と続けます。
これまでお教室に来た生徒数は1500人以上という、大人気のレッスン。1階のショップにも、北海道から九州まで全国からファンが訪れるそうです。
見る人の心を明るく照らしてくれる、杏奈さんの作品。それは一針一針に込められた杏奈さんの「楽しい!」という刺繍への愛が伝わってくるからかもしれません。
2階は刺繍教室。1回8名でのレッスンです。
2階の作業スペース。階段の凸部(写真左下)を板でカバーし、サイドテーブルに。
1階のミニキッチン。レッスンでは最後に、みんなでティータイムを過ごします。
Atelier アンナとラパン 刺繍道具店
リフォーム
構造 木造在来工法
地上2階建て
延床面積 66㎡
完工時築年数 築50年
取材・文
渡部和泉 わたなべ いずみ
ライター、フードコーディネーター、国際中医薬膳師。 著書に「コーヒーショップをつくる」(旭屋出版)などがある。東京の郊外に建てたWBハウスで、月に1日だけオープンする「cafe mel」を営む。
https://www.cafemel.com/
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