

母と娘の創作基地は
「パオ」のような8角形の家
vol.7 所沢市Kさま邸
ここは日本画家のKさんと、イラストレーターの長女、ガラス作家の次女が、3人が使うアトリエ。
「20年くらい前かしら、家族で旅したモンゴルのパオがとっても居心地よかったの。包み込まれているような安心感があって、忘れられない思い出。あんな雰囲気のアトリエがあったらいいねと、娘たちとずっと話していたんです」。
というのも、長女も次女もそれぞれの家庭で子育てに忙しい毎日。自宅では家の雑務が気になり、中々創作活動に集中できないのが悩みだったそう。
夢のアトリエが現実味を帯びたのは、今から2年前のこと。Kさん宅の隣地が空き、購入することができたのです。
「タカキホームと、建築家の古市久美子さんに頼もうと決めていました。親戚が新築したり、長男が自宅をリフォームしたりとお世話になっていて、センスも腕前も信頼していましたから」とKさんは話します。

Kさんが好きなグリーンがアクセントカラー。
パオとは、ゲルとも呼ばれる、モンゴルの伝統的な移動式住居のこと。分厚いフエルトで包まれた、円形の壁が特徴です。
建築家の古市さんは「予算のこともあり、完全な円ではなく8角形の家にすることに決まりました。建てるには非常に高度な技術と綿密な設計が必要で、ワクワクしつつも、終始緊張感がありました」と話します。
その技術を担当したのは、身体は人一倍大きいけれど細やかな作業が得意な、タカキホームのT大工。話を聞いた途端、ぜひやりたいと目を輝かせたそうです。
ずっと見ていても飽きない、組細工のように美しい床。中心から木材を1ピースずつはめていくのですが、たとえ1㎜でもズレたら全体に影響してしまいます。
「タカキホームの現場はいつも和やかですが、さすがに床張りの時はピリッと張り詰めた空気でした」と古市さんは振り返ります。

柱を立てないかわりに、天井に鉄製の十字型の棒を渡し、補強しています。見た目も格好良く、ランプを吊したりと実用面でも便利。
ART
to make you happy
3人が作る、見る人を幸せにするアート

日本画家のKさん。絵画のみならず、陶芸も長年楽しんでいる。

玄関ドア脇のランプシェードもKさん作。

イラストレーターの長女。自然をテーマにしたやさしいタッチに、癒やされます。姉妹が向かう仕事机は、大工にオーダーしたオリジナル。

ガラス作家の次女。オリジナリティー溢れるアクセサリーが大人気です。作品はinstagram: tamabow168、HP:https://yumi-takai64.webnode.jp/ で見ることができます。

絵とガラスで姉妹がコラボレーションした、ランプシェード。下のお皿はKさんの作品。


洗面台の壁には、Kさんが1枚ずつ描いてから焼いたタイルを貼り付けました。なんと水受けやソープディスペンサーなども手作り!

トイレの壁画は次女によるもの。ワクワクするような空間になりました。
ART
to make you happy
「室内中央には柱を立てず、すっきりした空間にしたい」というKさんの希望から、タカキホームの関連会社である住宅資材販売会社『タカキ』に構造設計を依頼し、1年かけて念入りにプランを立てました。
「途中でロフトを作ろうとか、3人のスペースを分けようとか、紆余曲折がありましたが、結局最初のプランに戻りました。実際に過ごしてみると、とっても快適!お互い背を向けているから個々のスペースを確保しつつ、一体感がある。創作意欲がわきますね」とKさんたちは嬉しそうに話してくれました。
居心地がよいのは、設計にも理由があります。古市さんは、パッシブデザインが得意な建築家。季節ごとに変化する太陽の位置や、風の流れを計算して、窓の取り付け場所を決めているのです。また、壁と屋根を二重構造にすることで通気層を作り、夏の熱気や湿気を逃がす効果があるのです。

屋根の通気口を夏は開け、冬は閉じます。それにより、夏は熱気と湿気を屋外へ出して室内を涼しくし、冬は温かい空気を室内に閉じ込めます。
冬は、南側の大きな窓からたっぷりの日差しが差し込みます。

夏は、北側の低位置にある小窓からの涼しい北風が、天窓へ流れます。高低差・温度差による自然換気なので、身体に優しいのです。
建て始めてから5ヵ月。完成前の状態で家は引き渡され、壁の漆喰塗りから棚の取り付け、タイル貼りなどはKさんたちで手掛けました。
キッチンの壁画は、姉妹の子どもたちによるもの。3世代アーティストによる、コラボレーションです。
「お引き渡しの時よりずっと家が生き生きしていて。愛情をかけて丁寧に暮らしていらっしゃるのが伝わってきます」と、古市さんとタカキホームのスタッフは感激していました。
「アトリエは今からがスタート。どんどん創作していかなきゃね」と、Kさんはにっこり笑います。3人のセンスで彩られたアトリエからは、どんな作品が生まれるのでしょう。
近い将来、この8角形の家でギャラリーイベントを開催するかもしれない、とのこと。今から楽しみでなりません。

キッチンの壁。やさしい色合いのタッチが和みます。
所沢市Kさ ま邸
構造 木造平屋建
敷地面積 約59坪
建築面積 約19坪
延床面積 約19坪
設計:古市久美子建築設計事務所
about
the Architect

建築家
古市 久美子さん
ふるいち くみこ
Kさま邸を設計した女性建築家。
材料、土、風、熱、気候の特性をいかした
パッシブデザインが得意。
気さくな人柄で、小さな事にも親身になって
相談にのってくれるとまわりからの信頼も厚い。
三児の母でもある。
古市久美子建築設計事務所
取材・文
渡部和泉 わたなべ いずみ
ライター、フードコーディネーター、国際中医薬膳師。 著書に「季節の手づくりジャムの本」、「家族ではじめる、小さなカフェ」などがある。東京の郊外に建てたWBハウスで、月に1日だけオープンする「cafe mel」を営む。
https://www.cafemel.com/
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