top of page

薪ストーブのある暮らし

パッシブハウス・冬編

 vol.5 小平市Tさま邸 

薪ストーブを囲むときは、ご主人は上がり口に、奥さまは中央の椅子に座ります。ゆらめく炎を眺めたり、パチパチという音に耳を傾けたり。ご夫婦ふたり、ゆったりとした時間を過ごします。

エアコンを付けず、光や風など自然の力を利用した家で暮らす、小平市のTさんご夫婦。前回は暑い時期に伺い、北側の冷たい空気を取りいれたり、ハッカオイルを利用したりと、夏を快適に過ごす工夫をたくさん教えてもらいました。
では、冬はどのように過されているのでしょう。北風が強く吹きすさぶ寒い日に、Tさんのご自宅に再度お伺いしてきました。

空気が乾燥した寒い日でしたが、家の中は春が来たかのように暖か!2階の窓から時折入る冷たい空気が、心地よいほどでした。

日差しが気持ちいい、2階のリビング。季節ごとに変化する太陽の位置を考慮して、窓の高さやひさしの長さが計算されているから、冬は日が入り暖かく、夏は直射日光が入らず涼しい。

Tさん邸の冬の主役は、なんといっても玄関の土間に設置された薪ストーブ。ヤカンを載せておけば蒸気で乾燥もしないし、遠赤外線の効果で身体の芯からポカポカしてきます。
「東日本大震災の時に電気ヒーターが使えず、とても寒くて辛かったのがきっかけです。電気を使わない暖房器具ということで、薪ストーブに興味を持ちました」と、薪をくべつつ話すご主人。海外製が多い中、「被災地を少しでも応援できれば」と、岩手の会社がつくる薪ストーブを選びました。
家を設計した建築家の古市さんは「玄関であり、通路でもある土間ですが、薪ストーブがあることで人が集まる場所となります。ここをサブリビングと位置づけ、プランニングしました。吹き抜けで2階のリビングとつなげることで一体感が生まれ、1台で家全体を暖めることができます」と教えてくれました。

The Fun of

Wood Stove

薪ストーブの楽しみ

電気を一切使用しない、薪とペレット兼用の国産ストーブ。「冬だけではなく、それ以外の季節も薪ストーブを見ると心が落ち着くし、インテリアとしても欠かせない存在となっています」とTさん。

「燃やす木によって香りが異なります。桜の木は甘いにおいがしました。燃え方や灰の残り方もそれぞれ。おもしろいですね」。

薪は屋外の薪棚に保管。山間部に住む知人から生木をもらったり、剪定中の人に声をかけたりして、調達しているそう。時々、タカキホームから廃材を譲ってもらうことも。

2階のリビングには火鉢が。薪ストーブで火を付けた炭を持って上がり、炭火でお餅やパンを焼いたりします。

薪ストーブの上でじっくり焼いた、安納芋。中心まで柔らかく、甘さもしっかり。シチューや焼きりんご、ピザに挑戦したこともあるそう。

毎朝ハンドドリップでコーヒーを淹れるご夫婦。抽出後のコーヒーカスは、薪ストーブの近くで乾燥させ、庭の肥料に再利用しています。

1階から2階に続く、壁一面の本。蔵書に合うようにタカキホームの大工が造作した本棚です。薪ストーブにあたりながら読書をする時間は、最高の贅沢。

薪ストーブのある土間(サブリビング)と、生活の場である2階を煙突がつなぎます。煙突がまっすぐなのでススが付きにくく、掃除もラク。

The Fun of

Wood Stove

薪ストーブに火が入るのは、Tさんの帰宅後。だいたい午後6時過ぎです。10分ほどかけて火をおこしてヤカンをのせ、沸いた湯でふたり分の湯たんぽをつくります。午後7時、暖まった2階で晩ごはん。1時間で室温が約4度上がるそうです。その後、湯たんぽの入った温々のお布団で就寝、というのが流れ。
朝はさすがに冷えるものの、ふたりともすぐに出勤するし、昼間はリビングに日差しがたっぷり入るので、日なたぼっこしているように気持ちいいのだとか。

冬もハーブや花が育つ、ベランダ。夏はグリーンカーテンのように生い茂ります。

「薪ストーブとの付き合いは4年目ですが、まだ火を思い通りに操れません。でもそこがおもしろいし、コーヒーをちびちび飲みながら火をおこす時間で、仕事からプライベートに頭をリセットできます」というご主人の言葉に、「火をおこすために、早く帰ってくるようになったものね」と奥さまが笑います。
ご夫婦ふたりで薪ストーブの前に座り、炎を眺めながらなんてことないことを話したり、本棚の背表紙をツラツラと眺めたり。そんな穏やかな時間こそが、この家の空気をやさしく、じんわりと暖めるのでしょう。
スイッチひとつで何でも手に入る時代。だからこそ、時間と手間をかける薪ストーブは楽しく贅沢だし、私たちに大切なことを教えてくれるのかもしれません。

玄関先には、春の気配。

小平市Tさま邸

構造 木造在来工法
地上2階建
敷地面積 85.30㎡
建築面積 33.94㎡(建ぺい率39.79%、許容40%)
延床面積 66.23㎡(容積率77.64%、許容80%)
 1階 33.94㎡
 2階 32.29㎡
設計:古市久美子建築設計事務所

about

  the Architect

建築家
古市 久美子さん

ふるいち くみこ

Tさま邸を設計した女性建築家。

材料、土、風、熱、気候の特性をいかした

パッシブデザインが得意。

気さくな人柄で、小さな事にも親身になって

相談にのってくれるとまわりからの信頼も厚い

三児の母でもある。

古市久美子建築設計事務所

http://www.furuichikumiko.com

取材・文

渡部和泉 わたなべ いずみ

ライター、フードコーディネーター、国際中医薬膳師。 著書に「季節の手づくりジャムの本」、「家族ではじめる、小さなカフェ」などがある。東京の郊外に建てたWBハウスで、月に1日だけオープンする「cafe mel」を営む。https://www.facebook.com/welcome.cafemel/

“タカキホームの家で暮らしています”  index

vol.1

ガーデニングを楽しむ、花いっぱいの住まい

―小金井市Yさま邸―

vol.2

エアコンなしでも快適に暮らせる、パッシブハウス

―小平市Tさま邸―

vol.3

急な来客にも慌てない、いつでも歓迎できる家

―小金井市髙木邸―

vol.4

タカキホームの「キホンの家」、モデルハウスの見所

―東大和市モデルハウス―

vol.5

薪ストーブのある暮らし パッシブハウス・冬編

―小平市Tさま邸―

vol.6

この先も安心して暮らせる、平屋のような2階建て

―小金井市Tさま邸―

vol.7

母と娘の創作基地は「パオ」のような8角形の家

―所沢市Kさま邸―

vol.8

前居の建具を引き継いだ、北欧風の大人かわいい一軒家

―三鷹市Oさま邸―

vol.9

はけのふもとに建つ、瓦屋根の文化住宅

―小金井市Kさま邸―

vol.10

人と人、空間と空間をつなぐ、スタイリッシュな3階建て

―小金井市Yさま邸―

vol.11

築30年の実家をシンプルでナチュラルな空間にリフォーム

―西東京市Yさま邸―

vol.12

西荻窪の居抜き物件を、パステルカラーの刺繍教室兼ショップにリフォーム

―杉並区西荻窪『Atelier アンナとラパン 刺繍道具店』―

vol.13

中古戸建てを建築家とともにリフォーム。グレーが基調の洗練された室内

―西東京市Gさま邸―

vol.14

“ガーデニング霊園のいせや”が作った武蔵小金井駅前のカフェラウンジ

―株式会社いせや ロゼリア・ラウンジ―

vol.15

家族が健やかに暮らせる、通気断熱WB工法の家

―目黒区Oさま邸―

vol.16

住居+プライベートネイルサロン。モノトーンでまとめた一軒家

―杉並区Nさま邸―

vol.17

家事・育児動線が考えられた、北欧モダンハウス

―小金井市Mさま邸―

vol.18

建築家とともにリノベーション。骨董品店オーナーのアトリエ兼自宅

―杉並区Sさま邸―

bottom of page